保育士を取り巻く環境

共働き家庭が増え、それぞれの家庭環境が多様化する現在、それに伴って保育を取り巻く環境も日々沢山の変化が巻き起こっています。

これからの保育業界がどうなっていくのか、今後保育士はどういった事を求められるのか、考えて行きましょう。

多様化する保育形態

少子化と叫ばれ、子ども達はどんどん減っているはずなのに、保育士が足りない!それが今の日本の不思議な状態です。子育て世代では共働きの世帯が増えました。「子どもを預けてでも働きに出なければ、家庭が成り立たない!」といった世帯も少なくありません。待機児童が増えている背景にはこのような事情があるようです。

働くお母さんが増えたことで保育も多様化しています。残業ありきの正社員としてバリバリ働くお母さんのための、延長保育や深夜保育。シフト勤務で土日も働くお母さんの為の休日保育。病気療養時や大事な用事になどの時に使える一時保育。昔では考えられなかった保育形態も、現代の働くお母さんのニーズに合せてどんどん広がってきています。

また近年、発達障害や食物アレルギーにしっかり対応できる保育園、英語を使った環境で保育を行なう保育園、教育的要素を独自のカリキュラムで取り入れる保育園など、特色豊かな保育園が多数登場しています。「子どもを見守る場所」というイメージの強かった保育園が「子どもの能力を伸ばし、成長を支える場所」といった変化を遂げ、保育の内容も園よって個性豊かなものが目立つようになりました。

ここまでの変化を遂げて来たのには、「民間企業の保育業界への参入」も大きいのかもしれません。待機児童の多い地域には近年企業が運営している保育園が急激に増加しています。企業が運営する保育園は、利益を出しながら運営していく術を知っています。「子ども+親のニーズ」を満たすために、魅力的な保育の導入に力を入れている園も多く、それに引っ張られる形で社会福祉法人の保育園も新たな保育方法を積極的に取り入れているようになったと感じます。

しかし、このように「保護者にとってとても魅力的な保育園」は、実際に勤務する保育士にとってはどう見えているのでしょうか?現場では保護者への魅力が増えた分、保育士の仕事量が増え、肝心の子ども達との関わりの時間や余裕が無くなっているという声も聞かれます。忙しさや仕事量は増える一方で賃金は一向に変わらないなどの理由により、他業種に転職し、潜在的保育士に成りをひそめてしまう保育士も少なくありません。

ただし、このような保育士状況が取りざたされ、環境の改善に向けた取り組みが国や自治体によって現在行われてきています。補助金による給与のベースアップ、家賃補助制度などの取り組みに加え、各保育園でも完全週休2日制、有給消化100%や、時短勤務、復職のしやすい職場環境、しっかりとした研修制度を設けるなど改善を行なっている所も多くなってきました。今後も保育士需要は見込まれるため、待遇改善は進められると思います。

気持ちよく働ける職場環境で、質の高い保育を行なって行きたいものですね!

認定こども園の登場

◆認定こども園とは?
簡単に言うと教育・保育を一体的に行い、保育園+幼稚園のそれぞれの良さをひとまとめにしたような施設です。内閣総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣が定める基準をクリアしていれば、現存する保育園・幼稚園からの移行も可能です。入園数が年々少なくなる幼稚園をこども園として活用することで待機児童を解消し、保育園で求め始められている教育的要素を取り込み、多様化する保育ニーズに対応するといった狙いがあるそうです。
◆認定こども園で働くには「保育士資格」「幼稚園教務」の両方の資格が必要?
現段階ではこども園で絶対に2つの資格が必要というわけではありませんが、保育、幼児教育のの両方を担う施設という面では「両資格を持っている方がより望ましい」とされています。というのも、片方の資格しか持っていない場合、やはり携われる業務の幅が限られてしまいます。オールマイティに活躍したいならやはり両方の資格を取得しとくべきでしょう。
◆認定こども園のメリット・デメリット
認定保育園で働くメリット・デメリットはどんなものがあるでしょうか?

【メリット】

  • 今後認定こども園に移行する施設も多いため、将来に向け今から経験を積むことができる
  • 保育と幼児教育の二つを、実際の現場で学ぶことができるので知識も増え、キャリアアップ際に有利になる事も。
  • 国や自治体がこれから力を入れていこうとしている運営形態なので、給与・待遇アップの可能性が高い。

【デメリット】

  • 保育園と幼稚園の機能が一体化しているので経験が少なかったり、知識や技術がどちらかに偏っていると、困ってしまう場面も。
  • 0歳児~5歳児までの園児や異年齢保育に万遍なく対応できるオールマイティさが必要。
  • まだ始まって間もない運営形態なので、国や自治体、現場でさえも手探り状態であることも。
保育園、幼稚園のいいとこどりのような認定こども園。メリットもあればデメリットもあります。始まってまだ歴史も浅いので大変な事もあるかと思いますが、キャリアの幅は確実に広げられると思います。保育士資格、幼稚園教諭をお持ちの方はチャレンジされるのも良いかと思います!

これからの保育業界

今後の保育業界は、多様化がさらに進んでいくと思います。多様化に伴い、保育園の施設格差が発生したり、業界同士でせめぎ合いも巻き起こるかもしれません。また認定こども園の発展により、保育と幼児教育の融合が、これから先もっと重要視されるようになれば、保育士はそのプロフェッショナルとしての資質が求められるようになるでしょう。

保育士の働き方も画一化する面もあれば、それぞれの施設によって大きく異なる面もあることでしょう。 保育士としての能力を磨き、経験を積むこと、そして多様化する保育の中で自分の得意なこと、やりたいことができる保育園をキッチリ見極め職場選びをすることが重要になってくるかと思います。

どんな環境でも、子ども達を一番に考え、臨機応変でスマートな保育ができる。それが今後の保育士に求められる保育士像なのかもしれません。